老人と宇宙

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

すごく面白くて、一気に読んだ。最後のほうは、夜どうしてもやめられなくて、明け方まで読んでしまった。久しぶりにかなり自分好みの小説にあった感じ。
宇宙と書いてそらと読む。日本語のタイトルは「老人と海」インスパイアだけど、原題は「Old Man's War」で「The Old Man and the Sea」とはちょっと違う。舞台は未来。文明は地球と、地球を飛び出したコロニーの人々に分かれている。地球もそれなりに文明が進歩しているけれど、コロニーに移り住んだ人たちはもっと進歩していて、でもなぜその格差が生まれているのかはわからない。コロニーはほかの星の文明と接触しているからだとも考えられているが、地球にはその情報は入ってこない。コロニーへ入植できるのは、発展途上国の人たちに限られていて、それ以外は75歳でコロニー防衛軍に入るほか無い。コロニー防衛軍にはいって、最低2年間の兵役を終えると、コロニーの市民権が与えられる。そんな世界。どうもコロニーでは、老人を若返らせるかなんかして、戦う(戦う相手は外宇宙のほかの生命体)ことができる体にしてくれるらしいことはわかってる。で、主人公のジョンは、嫁さんに先立たれて、一人防衛軍に入隊する、という話。
作者も最後に書いているんだけど、ハインラインの「宇宙の戦士」の影響をすごく受けて書かれた話で、最初は軍隊での訓練から始まり、主人公が歩兵として敵と戦っていく様が書かれている。ただ、ハインラインの「宇宙の戦士」は、ハインラインは結構好きであるにもかかわらず、僕は最後まで読みきることができなくて(バーホーベンの映画は皮肉が利いててすごく好きなんだけど)、「老人と宇宙」も大丈夫かと思ったけど、それはまったくの杞憂で、読みやすくてよかった。感情移入しやすい文体だし、話はわりと先が読める感じではあるのだけれど、それでも先が読みたくなる。おいおい、そんなに世の中うまくいくのか?って思うところもあるけど、最後はまあいい感じで終わるし、読後感もよかった。
この小説は、最初作者のブログ(http://www.scalzi.com/whatever/)で1日に1章ずつ公開されて、それが出版者の目に留まって出版されたらしい(とはいっても作者はもともとライターで、出版を見越して公開したらしいけど)。いろいろなやり方があるなあ。